Jリーグでは、なぜ試合後にクールダウンをしないのか?
text by Shinya Kizaki
photograph by Masahiro Ura
ホームでの試合のみクールダウンが許可された浦和レッズ。こうした交渉は各クラブでも行っていくべきではないだろうか
Jリーグの試合後、ピッチを見ていて、ふと疑問に思った。
「なぜ、日本のチームは、クールダウンをしないのか?」
試合後のジョギングはブンデスリーガの常識。
筆者が6年間取材したブンデスリーガでは、試合後に選手がランニングシューズに履き替え、芝生の上を10〜15分間ジョギングするのがお馴染みの光景だった。「芝生の凹凸がマッサージになる」と言って、靴下のまま走るチームもあった。
最新の生理学の理論によれば、試合終了のホイッスルから8時間の過ごし方が、その後の疲労回復の速度を決めると言われている。この8時間の間にきちんとビタミンを取り、クールダウンを行えば、48時間(2日間)で100%のコンディションに戻すことができる。だが、このときアルコールを飲み過ぎたり、栄養補給やクールダウンが足りないと、次の試合までに体調が回復しない……なんてことになる。試合終了後、ロッカールームでフルーツを食べ、その後、芝生の上をジョギングするのは、ドイツサッカー界では常識だ。
Jのスタジアムではピッチでのクールダウンは“禁止”。
しかし、Jリーグではほとんどのチームが、クールダウンを行わない。いったい、なぜなのか?
結論から言うと、Jリーグでは、ほとんどのスタジアムで、ピッチでのクールダウンが“禁止”されているからだ。つまり、「やりたくても、やれない」のである。
今季、浦和レッズの監督に就任したフォルカー・フィンケは、ドイツでやっていたのと同じように、試合後にクールダウンを行おうとした。しかし、そこで待っていたのは、運営サイドからの拒否。「芝生が傷む」、「芝生の補修をすぐに行わなければいけない」という理由で、ことごとく断られた。なかには、「選手がクールダウンをすると、ファンがスタンドに残ってしまい、その分、警備員の時給が発生してしまう」と意見する運営者もいた。
かろうじてホームである埼玉スタジアムでは、交渉の結果、ピッチの端に限定して、クールダウンを行えることになった。だが、アウェーに行くと、依然として芝生の上でジョギングすることが許されていない。
選手のコンディションよりも芝優先? これがJの現状だ。
試合運営者の立場になって考えると、芝生に細心の注意を払いたいという気持ちもわからないではない。基本的にJリーグのクラブは、自治体からスタジアムを借りている身だ。自前のスタジアムならば、芝生が荒れても自己責任だと腹をくくれるが、借り物だとそういうわけにはいかない。なるべくいい状態で返すことが求められ、それゆえに“たった15分”のランニングでも断りたくなる。
だが、これではプロとしての優先順位が間違っていないだろうか。プロリーグが最も大事にすべきは、プレーの質であって、芝生ではないはずだ。いくらイベントを開催したり、有名人のゲストを用意しようが、サポーターがお金を払って観に来るのはサッカーのプレー。プロリーグとして、プレーの質を高めることに最大限のエネルギーを注ぐべきだ。なのにJリーグでは、選手のコンディションより、芝生を優先してしまっている。
スタジアムの運営者は優先順位を再考すべき。
15分のジョギングによる芝のダメージなど知れている。警備員の時給が余計にかかるかもしれないが、サポーターへの試合後のサービスと捉えれば、その分の予算をあらかじめ計上することも可能だろう。
もちろん全てのチームがクールダウンをする必要はない。採用するか、しないかは、各監督の好みの問題だ。だが、監督がやりたいと思ったときに、やれないのは絶対におかしい。
いま一度、各スタジアムの運営者は頭を柔軟にし、優先順位を考え直すべきだろう。
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